スポーツブラにレギンス、汗染みなのかマン汁なのか
「北見くん。今日の2軒目、気合い入れて行った方がいいわよ」
先輩配達員の春野さんが、やけに真顔で言った。
「え、どういう意味ですか?」
「彼女の名は――真壁凛子(まかべ・りんこ)。元・レスリング女子代表。今はこの町のアスリート育成コーチ……通称、**“筋肉ミルク女帝”**だ」
「物騒な異名ですね……」
「彼女の栄養接種量は常人の3倍。あと、“摂取後に汗が乳酸菌の匂いがする”って噂もあるわ。鼻おかしくなるわよ」
そこまで言われたら、覚悟を決めるしかなかった。
町のスポーツセンター内、トレーニングルームの一角。
待っていたのは、190cm近い高身長。
背中にタオルをかけたジャージ姿、肩幅が冷蔵庫サイズの女――真壁凛子。
「ミルク、来たか!!」
「は、はいっ、夜ミルク便、北見ですっ!」
「よし、そこ置け!」
ディスペンサーを床に置いた瞬間、真壁さんはそれを片手で持ち上げた。
「……って、ちょ、ちょっと、直接口に――!?」
俺の説明を聞く間もなく、ノズルを自分の口に突っ込み、**グボボボッ!**と一気に吸い上げた。
(牛乳、勢いで減ってる!? いやむしろ蒸発してる!?)
「んはぁ~~~~~~~~ッ!!! くぅぅぅ、身体が燃えるっ!!!」
飲み干した瞬間、彼女の肉体から湯気のような気配が立ち上った。
「うおおおおおおッ! M字開脚スクワット500回いけるぞコレ!」
真壁さんの肌がじわりと汗ばみ始め――
……ふわりと、どこか甘くて、妙に濃密な香りが鼻腔をくすぐった。
この香り、まさか……汗!?
「こ、これは……!」
「ふふふ、よく言われる。“私の汗、何か媚薬みたい”って。ミルク飲んだ後だけ特にヤバいのよ。自分でもちょっとゾクゾクするわ!」
(ゾクゾクするのはこっちだよ……!)
「ふぅっ……じゃ、スパーリングいくか!」
「いえいえいえいえ! それはまた今度でいいです!!」
車に戻った。西谷さんが笑いながらこちらをうかがう。
「どうだった? 女帝」
「……人としての強さを感じました。あと、確かにあの汗、危ないです」
「ふふ、そうでしょう。だから、彼女を最後の配達先にするってのが夜ミルク便の鉄則なんだ。
今日の配達はこれでおしまい。お疲れ様!」
(つづく)

